リハビリテーション科

リハビリテーション科

機能回復と社会復帰を後押し

リハビリテーション科とは、病気や障害、老化、スポーツ外傷、手術などによる機能障害の回復・改善を図り、日常生活や社会生活への早期復帰を目指すことを目的とした診療科です。なお、リハビリテーション(リハビリ)とは、心身の機能や構造に障害が生じ、生活に支障をきたした状態を医学的に改善しようとするあらゆる取り組みのことを言います。

在籍する理学療法士による運動療法

当院は、リハビリテーションを重視しており、最新機器による「物理療法」をはじめ、現在常勤6名ほど在籍している当院の理学療法士※の指導のもとで行う「運動療法」に注力し、これらの療法を行うことで、失われつつある機能の回復および改善を目指します。これらのリハビリは、決して即効性が期待できるものではありません。繰り返しの動作や運動を続けることで、機能がよみがえってくるのです。道のりは、決して平たんではありませんが、楽しくじっくりと取り組むことで、痛みから解放される日を目指しましょう。

※理学療法士(PT):けがや病気などで体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、および障害の悪化予防を目的に、運動療法や物理療法などを用いて、自立した日常生活が送れるように支援する医学的リハビリテーションの専門職(国家資格)です。座る、立つ、歩くなどの動作ができるように、体の基本的な機能の回復をサポートします。

対象となる主な症状

・首や肩が痛い・腕が上がらない・手足がしびれる・腰が痛い・歩くと膝が痛む・けがで体がよく動かない・体を動かすと痛みがはしる・スポーツ活動に早く復帰したい・手術後のリハビリテーション など

リハビリの主な対応疾患

上肢・下肢の骨、筋、腱、靱帯、神経の損傷 / 脊椎損傷 / 体幹・上肢・下肢の外傷、骨折、切断 / 関節の変性疾患(変形性関節症) / 関節の炎症性疾患(関節リウマチ) など

当院の主なリハビリ治療

運動療法

理学療法士の指導のもと、体の全部または一部を実際に動かして関節の可動域を拡げたり、筋肉の質を高めたりします。慢性的な痛みの改善には欠かせない根本的な治療です。ご自宅でできるリハビリテーションもご指導いたします。

物理療法

水や光、熱や電気などの機械的な力を用いて行う治療法のことで、「理学療法」の一種です。その他、マッサージや牽引療法など、薬物を利用せずに、物理的な手段を用いて痛みを和らげ、関節の可動範囲を広げるなどして、日常生活に必要な動作を容易にする療法です。

※患者様の状態に合わせた「自主トレーニング法」や「日常生活上の注意点」などについても適宜アドバイスいたします。

主な運動療法

関節可動域訓練

関節可動域訓練

骨折後のギプス固定や臥床、また疼痛により不動であった関節には拘縮が起こります。一度硬くなってしまった関節は放置していても改善はしません。適切な時期よりアプローチをすることで関節の動きを正常に戻します。可動域訓練は、理学療法士が徒手的に動かし、拘縮の改善を図ります。
ストレッチ

ストレッチ

柔軟性が低下した体は動きが制限され、局所にストレスを加えることになります。それにより筋肉、関節、靭帯などの様々な部位に痛みを引き起こす原因となります。そこで必要となるのがストレッチ(筋肉を伸ばす運動)です。ストレッチには、いくつか種類があり、パートナーによるストレッチと1人で行うセルフストレッチがあります。
筋力トレーニング

筋力トレーニング

腰や膝など体の一部に疾患を抱えると、体を動かさない時間が多くなり、それにより筋力が低下していきます。その結果、体の安定性が下がり、歩行や階段昇降、姿勢保持が行いにくくなり、様々な部位に痛みを引き起こす原因となります。そこで体の状態にあった筋力トレーニングを行い、筋力の維持・増進を図り、症状の改善、日常生活レベルの向上を目指します。
姿勢動作改善

姿勢動作改善

骨折や捻挫などのはっきりとした原因がなく、疲労や使い過ぎなどで起きる痛みに関しては、身体の一部分に負担がかかりすぎていることが原因といえます。例えば、姿勢(猫背や腰を剃った姿勢など)や動作(歩行、ランニングフォーム、投球フォーム)の不良が原因となっていることが多々あります。そのような患者様には、筋力強化や柔軟性向上、フォームの指導などを行うことで、原因となる姿勢や動作を改善し、負担のかからない身体づくりを行います。そうすることで、再発予防や慢性痛になることを防ぎます。

主な物理療法

牽引(けんいん)療法
身体のある部分に「引く力」を加えること(牽引)によって、骨折、筋スパズム(筋肉の一部分の硬直状態)、関節変形、拘縮(こうしゅく:関節の動く範囲が狭くなった状態)などに対する治療を行います。
自動牽引装置
ウォーターベッド
水本来の流体特性を応用しており、ウォーターベッドならではの浮遊感に抱かれながら、水の噴流刺激によって、脊椎を中心に筋肉、腱、靭帯などの凝りをほぐします。
ウォーターべッド型マッサージ器
ホットパック
温熱療法の一種で、あらかじめ温めておいたパックを体にあてる、伝道熱を利用した治療法です。肩・腰・足などの患部を温めることによって筋肉はやわらぎ、新陳代謝が活発になるので、痛みの緩和が期待できます。骨折固定後のリハビリ治療や慢性疾患にとても効果的です。
乾式ホットパック装置
SSP(低周波治療)
SSPとはSilver Spike Point の略で、銀色の尖った金属電極のことで、この電極をツボに置き、低周波通電を行うツボ表面刺激法がSSP(低周波治療)です。東洋医学の鍼麻酔と西洋医学の電気治療を組み合わせることで実現した治療法であり、言わば「刺さない鍼治療」なのです。痛みやしびれの緩和、肩こり、腰痛などの治療に効果的です。
低周波治療器
マイクロ波治療
マイクロ波(超短波)を照射することにより、体の深部まで均一に温めることができる温熱治療器です。この温熱効果で肩や膝の筋肉のこりをほぐしたり、神経痛による関節の痛みを改善したりする効果があります。
マイクロ波治療器
ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドローム:運動器の機能が衰えている状態

ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome、略称:ロコモ、和名:運動器症候群)は、加齢に伴う筋力の低下をはじめ、関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより、運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになっていたり、そのようなリスクが高い状態を言います。運動器の衰えとは、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、「立つ」、「歩く」といった機能が低下している状態です。進行すると日常生活にも支障が生じてきます。

ロコモに対応したリハビリなども行います

ロコモティブシンドロームの患者様に対して、当院では筋力トレーニング、歩行訓練、転倒予防指導などを行っております。患者様以外の方でもロコモの可能性が疑われる方、また将来に向けてロコモが心配という方は、お気軽にご相談ください。

健康寿命をロコモ予防で延ばす

そもそもロコモティブシンドロームとは、2007年に「日本整形外科学会」が、人類が経験したことの無い超高齢社会・日本の未来を見据えて、このロコモという概念を提唱したことが始まりです。ロコモは、「放っておくと要支援・介護の状態になる可能性のある、変わりうるけれども慢性的、永続的な運動器の機能障害」を意味します。運動器は骨、関節、筋肉や神経で構成され、それぞれが連動しており、どれか一つが悪くなっても身体はうまく動きません。いつまでも自分の足で歩き続けていくためには、ロコモを予防し、健康寿命を延ばしていくことが必要なのです。

運動器障害は健康寿命を脅かす最大要因

先にも述べた健康寿命とは、「健康上の問題が無い状態で日常生活を送れる期間」のことを言います。現在、平均寿命から健康寿命を引くと、男性は約9年、女性は約12年となっています。自立度の低下や寝たきり、いわゆる要支援・要介護状態は、健康寿命の最大の敵です。そしてその要因の第1位は「運動器の障害」なのです。要介護や寝たきりは、本人だけでなく、家族など周囲の人にとっても問題になります。大切な家族や友人らのためにも、運動器の健康を保持していく必要があります。

若いうちから運動習慣を身につける

骨や筋肉は、適度な運動で刺激を与え、適切な栄養を摂ることで強く健康に維持されていきます。ちなみに骨量や筋肉量のピークは20~30代です。弱った骨や筋肉では、40代・50代で体の衰えを感じやすくなり、60代以降には、思うように動けない体になってしまう可能性があります。そのため、若いうちから運動習慣を身につけることが大切なのです。また、軟骨や椎間板にも筋肉や骨と同様に、適正な運動負荷が必要です。ただし、過度な負荷のかかるスポーツや過体重によって「負担をかけられ過ぎる」と、軟骨や椎間板は逆に傷むこともあります。また、痩せ過ぎると筋肉や骨は弱くなってしまいます。肥満と痩せ過ぎは、いずれも好ましくありません。