骨粗しょう症
当院の骨粗しょう症治療は、東京都ではまだ少ない日本骨粗鬆症学会認定専門医である当院長が行います

骨粗しょう症

老化やカルシウム不足、閉経などが原因

骨粗しょう症は、老化やカルシウム不足、運動不足、喫煙や飲酒、閉経(女性ホルモンの減少)などが原因となって骨量(カルシウムやコラーゲンなど)が減少し、骨自体がスポンジのように粗くなるほか、骨の質も低下し、骨折しやすくなる病気です。高齢の女性を中心に年々増加しており、患者はおよそ1,280万人(骨粗鬆症ガイドライン2015年度版より)いると言われます。骨粗しょう症になると、わずかな衝撃でも骨折を来たしやすくなります(骨折リスク上昇)。そして、骨粗しょう症による骨折は「要介護状態」を招きやすく、これも大きな問題です。

治療により骨折リスクは減少する

骨量は、20~30歳頃の若い時期をピークに、加齢と共に減少していきます。この骨量、ひいては骨密度(単位体積あたりの骨量)が減少することによって骨粗しょう症と言われる状態に至ります。骨粗しょう症になると背骨や腰骨が体の重みで潰れたり、背中や腰が丸くなり、その部位に痛みが伴います。さらに変形による圧迫骨折が起こったり、ちょっとした転倒で骨折するといった事態を招きがちになります。なかでも大腿骨近位部(足の付け根の骨)を骨折すると、体を支える機能が損なわれてしまい、要介護状態にも至るおそれもあります。しかし、専門的な治療や適切な生活改善を行えば、骨密度の減少を改善し、骨折リスクを大幅に減少させることができます。

女性は50歳前後で骨量が急激に減少

高齢の女性を中心に年々増加の一途をたどっている骨粗しょう症は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下する更年期以降に特に多く認められます。エストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える働きがあります。閉経して、このエストロゲンの分泌量が減っていくと、骨吸収のスピードが速まるため、骨形成が追いつかず、骨が脆くなってしまうのです。そして、閉経を迎える50歳前後から骨量は急激に減少し始めます。そのため50歳になる前に骨粗しょう症の検査を一度お受けになることをお勧めします。このほかにも、偏食や極端なダイエット、喫煙や過ぎた飲酒なども骨粗しょう症の原因と目されており、最近では高齢の女性だけでなく、若い女性の骨粗しょう症も問題視されるようになっています。

骨粗しょう症の検査

骨粗しょう症の診断をする際は、骨密度検査、骨代謝マーカーの検査、X線検査、身長測定などが行われます。当院は、主に骨密度測定装置(DEXA)を使った骨密度検査で診断しています。検査の種類は以下の通りです。

骨密度検査

「骨密度」は、骨の強さを判定する際の重要な尺度の1つです。当院では、全身型の骨密度測定装置(DEXA)を導入しており、この検査機器による骨密度の測定(DEXA法*)を行っています。4ヵ月に1回のDEXA法による大腿骨、腰椎等の検査をお勧めいたします。

*DEXA(デキサ)法とは

提供:東洋メディック(株)提供:
東洋メディック(株)

DEXA法(Dual Energy X-ray Absorptiometry:二重エネルギーX線吸収測定法)は、高低2種類のX線を測定部位に照射して、その透過度をコンピュータで解析し、骨量を調べる方法です。DEXA法では骨量を単位面積で割った値で算出し、「骨密度」として表します。測定する骨は、主に腰椎(腰の骨)、大腿骨頸部(太ももの付け根部分の骨)などです。短い時間で済むうえ誤差が小さく、放射線の被爆量も少ないので、安全性に優れるというメリットがあります。上記のような利点から、現在DEXA法は、骨量測定の標準方法として重視されており、骨粗鬆症の精密検査や経過観察などで使われるケースが増えてきています。

骨代謝マーカーの検査

血液や尿によって「骨代謝マーカー」を調べることにより、骨吸収と骨形成のバランスがわかります。このバランスが崩れると、骨は弱くなります。また、骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では、骨密度の低下する速度が速いため、骨密度の値にかかわらず、骨折リスクが高くなっています。

X線検査

主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形が無いか、また「骨粗しょう化」の有無、つまり骨に鬆(す)が入ったようにスカスカになっていないかどうかを調べます。骨粗しょう症と他の疾患との鑑別に必要な検査です。

身長測定

25歳時点の身長と比べて、どのくらい縮んでいるかを調べます。25歳の頃より4cm以上低くなっている場合は、それほど低くなっていない人と比べ、骨折リスクが2倍以上高いという報告があります。

予防と治療について

骨粗しょう症の発症には、老化や閉経以外にも食事・運動などの生活習慣が大きく影響しています。そのため骨粗しょう症は「骨の生活習慣病」とも言われ、食事・運動療法を取り入れることもこの病気の予防と改善には不可欠なのです。ただし、骨粗しょう症との診断を受けた場合は、治療の中心は薬物療法となります。

食事療法

骨粗しょう症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、および骨のリモデリング*に必要なビタミンD・Kなどです。骨粗しょう症の治療のためには、カルシウムは700~800mg/日の摂取がすすめられています。同時にビタミンDは400~800IU/日、ビタミンKは250~300μg/日を摂取することが推奨されています。これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスのとれた食生活を送ることが大切です。なお、アルコールやカフェイン、リン(スナック菓子やインスタント食品)などの摂り過ぎには注意する必要があります。過ぎた量のアルコールを摂取すると、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりします。カフェインもまた、カルシウムの排泄を促します。リンを摂り過ぎると、血液中のカルシウムとリンのバランスを保とうとして骨の中のカルシウムが血液中に放出されてしまい、骨密度の減少を招きます。

*リモデリング:
骨を壊す働きをする破骨細胞が骨を吸収する一方で、骨をつくる働きをする骨芽細胞が、破骨細胞によって吸収された部分に新しい骨をつくる代謝作用

積極的に摂りたい栄養素を多く含む食品

カルシウム

牛乳、乳製品、干しえび、しらす、ひじき、わかさぎ、いわし、ししゃも、大豆製品、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤ など

たんぱく質

肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品 などど

ビタミンD

あんこうの肝、しらす干し、いわしの丸干し、すじこ、鮭、さんま、かれい、うなぎ、煮干し、干し椎茸、きくらげ などど

ビタミンK

納豆、抹茶、ブロッコリー、きゃべつ、サニーレタス、モロヘイヤ、春菊、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にら などど

運動療法

骨は運動をして体重負荷をかけることによって増加し、強化されます。さらに筋肉を鍛えることで体をしっかりと支えられるようになり、バランス感覚も向上して転倒防止にもつながります。骨量を増やすには、何も強度の高い運動をする必要はありません。とくにご高齢者の方は、足腰が弱くなり、転倒もしやすくなっています。散歩やウォーキングといった軽度な運動を通して、背筋を伸ばし、足の筋力が衰えないようにするこが大切です。

薬物療法

骨粗しょう症の症状が進んだケースでは、食事療法や運動療法に併せて薬物療法も開始します。主な治療薬は以下の通りです。

主な骨粗しょう症の治療薬

骨の破壊を抑制する薬
ビスフォスフォネート製剤
骨吸収を抑えることで骨形成を促進し、骨密度を増やします。特に有効性の高い治療薬として知られ、現在、骨粗しょう症治療の第一選択薬です。ビスフォスフォネートは腸で吸収され、すぐに骨へと届きます。そして破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制します。すると骨形成が追いついて、密度の高い骨ができてきます。
選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)
骨に対しては、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、骨が壊れるのを抑制し、骨量を増加させます。ほてりなどの副作用がみられることもあります。
ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤(デノスマブ)
骨を壊す細胞をできにくくして、骨の破壊を抑えます。すると骨量が増え、骨折リスクが減少します。この薬は、6ヵ月に1回の皮下注射で済みます。
骨の材料を補う薬
カルシウム製剤
食事によるカルシウムの摂取不足、乳糖不耐症の方、胃腸の手術後などに用いられます。多くは、他剤と併用されます。
活性型ビタミンD3製剤
活性型ビタミンD3には、腸管からのカルシウムの吸収を促進して体内のカルシウム量を増やす作用があります。また、骨形成も促します。
ビタミンK製剤
納豆にも含まれているビタミンKは骨芽細胞に作用することで骨形成を促進し、同時に骨吸収を抑制することで骨代謝のバランスを整え、骨の質を改善します。※ワルファリン(血液を固まりにくくする薬)を服用している方には使えません。
骨をつくる薬
副甲状腺ホルモン製剤(PTH)
骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させる薬です。専用キットを用いて1日1回自己注射する薬と、週1回医療機関で注射する薬の2種類があります。骨密度が著しく減少している場合や、骨折リスクが高い患者様に用いられます。